2度目のカウンセリング【怒りの正体を知る】

初診から2週間経ち。臨床心理士の鈴木さんがカウンセリングをしてくれることになった。
鈴木さんは児童相談所に勤務されていたそうだ。

「前回のカウンセリングのカルテをみてしゃいかさんの『怒りのコントロールをしたい』という要望が分かりました。」

「このカウンセリングは6回~8回にわたりやっていきます。このカウンセリングで重要なことは『あなたが自分自身で気づくこと』です。こちらから何か『こうして。ああやって。とは言いません」

今日はまずはこの旦那さんに向けられる怒りが何なのか正体を知りましょう。
話したくないなら、今は話せないと言っても大丈夫です。しゃいかさんの頭は今渋滞している状態ですので、整理が必要です。

怒りの正体を知ることがまずは大切です。それから怒りとどう向き合うか?になります。


まずはこれまで生きてきて今日までのしゃいかさんを形成するものから。
まずは今一緒に住んでいる人を教えて下さい。
→家族構成を答え、夫、子供たちの年齢を答えた。

分かりました。
ではしゃいかさんの生まれについて。
しゃいかさんの結婚する前のご家族について教えて下さい。

しゃいかさんからみてどんなお父さんでしたか?
→父はよく怒る人でした。怒鳴ったりして、、怒りが収まらないときは暴力をふるう時もありました。
私達子供に対してはあまりそのようなことはありませんでしたが、母にはとても冷たくあたっていました。

お母さんは?
→母はそんな父の暴言や暴力に耐えていました。母にもちょっとヒステリックな部分はありました。きっと父から受けたストレスを知らない内に私達に向けていたのだと思います。

お母さんとはしゃいかさんはどのような関係ですか?
→仲はいいです。

お父さんとは?
→仲がいいです。

しゃいかさんにとってお姉さんはどうゆう存在ですか?
→私は姉を最も尊敬しています。姉には助けられてたてきたから。

しゃいかさんが一番幼いときで記憶に残っている印象に残っていることはありますか?
→多分3歳か4歳ぐらいのとき、父の怒鳴り声がしたので朝目が覚めました。
いつもように父は母を怒鳴りつけていました。でもその日は怒りが収まらず、父は母の首を絞めベランダから落とそうとしていました。姉は泣きながら二人を止めていました。

しゃいかさんもうわかっていると思いますが、、、怒りの原因はきっと『両親』にあるのだと思いますよ。あの時に何も出来なかった・・という思いがあるのでしょう。

これは『面前(めんぜん)DV』といいます。親が子供の前で激しいケンカをしたり、暴力を振ることです。これは立派な虐待です。

面前DVの苦しさは受けたことのない人にはわかりません。

『暴力を直接受けたことないんでしょ?』
『別にお父さんとも仲がいいでしょ?』
『過去のことじゃん』と思われてしまうことが多いんです。

しかし、直接DVを受けたと同じぐらいトラウマを抱えてしまうのです。

どれだけ時間がたっても過去のトラウマは感情と共に思い出すことができます。

隠れているだけです。

何かのきっかけにその感情が思い出されてくるのです。

そしてそのトラウマが呼び起こされる時が多いのが子育てをしたときです。
子どもはよく泣き、沢山のことを要求します。
しゃいかさんはその子供の要求にイライラするのではないでしょうか?

それは幼いころのしゃいかさんは母親や父親から与えられて記憶がないからです。

人は与えられていないことを他人に与えることができません。
幼いころのしゃいかさんが『私は貰ってないのにあげたくない!』といっているのです。

子ども頃に家庭という『安全地帯』がなかった人は大人になっても生きづらさを感じたまま生き続けます。
海を想像して下さい。
愛情いっぱいに育った人は浮き輪が空気いっぱいか、浮き輪が大きいのです。

だから世の中という海をプカプカと自由に泳ぐことができるのです。
でも『安全地帯』がなかった人、いつもギスギス、ピリピリした家庭環境が育った人はその浮き輪がないか、浮き輪はあるけど空気が入っていないかです。
いつも自分の手や足でかき分けて泳がないと沈んてしまう。いつも生きることに必死なのです。


しゃいかさん、涙が出るのはまだあなたが過去のトラウマが消化出来ていないからです。
きっと子育てをしたこの数年は『自分なんてダメは母親』と決めつけ辛かったでしょう。
理想の母親像と違う自分を責めているではありませんか?
あなたはダメは母親なんかじゃありません。

あなたは今まで辛い環境の中育ってきたんです。必死に生きてきたのです。いい子を演じてきたのです。

そしてあなたは自分で気づき今ここに来ている。素晴らしいことです。

自分を責めないで

あなたのせいじゃない。

あなたはこんな状況でも乗り越えてきたんです。



自己肯定感の低い人は他人が許すことができません。
『〜すべき』が多いのも自己肯定感の低い人の特徴です。

しゃいかさんの怒りのコントロールの鍵はまずは『自分を認める』ということです。『私はこういう人という、自己理解』が必要です。それには辛いと思いますが幼少期や小さい記憶の中から探る必要があります。焦らずにゆっくりとやっていきましょう。


『自己理解』ができると『自己受容』ができるようになります。
自己受容とはこんな自分でもいいんだと思うことです。


人は話すことでトラウマが消化されます。誰か話せる人はいますか?
アドバイスや余計な事を言わない、、だた黙って話ができる人は?無理に話そうとせずにしゃいかさんが話せる範囲で話したい人は?アドバイスは2次被害になります。何かきついことを言われるとまたトラウトになります。

姉なら話せます。姉とは辛い経験を共有しているのでよく分かってくれると思います。
でも・・・姉は今幸せに暮らしています。今私が話すことで姉が辛い思いをしないか心配です。

そう思うのであればやめましょう。
とりあえずはここだけでお話をしましょう。

誰にもまだ言えないのですが、ブログに書いてもいいですか?

書くを言う行為もいいトレーニングになりますよ。
でも誰かに見せようとするのではなくありのままを書いて下さい。
誰かにみせようとすると感情のズレがでてくるので。

ちなみにお姉さんの結婚生活はどのように見えますか?
姉はすごく幸せそうに見えます。

それは良かったですね。安全地帯がなかった人同士が結婚すると共倒れになります。
お姉さんの旦那さんは愛情いっぱいの家庭で育ち、お姉さんはその浮き輪につかまることが出来たのですね。

ここで一つ注意があります。
しゃいかさん、両親にはこの思いは言わないで下さい。言わないほうがいいことが多いです。大抵の場合は『何言ってるんだ』と逆ギレされることが多いからです。


今回はここでおわります。

しゃいかさん、もしこれから怒りが出てきたら深呼吸して下さい。大きく息を吸って、ゆっくり吐いて下さい。怒りが少しだけ収まりますから。


次回また会う時までに宿題を出します。言えなかったエピソードや、過去の嫌だった思い出(小学校や中学校なで、イジメなど)があれば言える範囲で教えて下さい。

2回目のカウンセリングの受けて気づいたこと・思ったこと

私は他人からみて虐待を受けていたのか、、と思った。今まで普通だと思ってた家庭環境が実は全然普通じゃなかったんだ。だからいつも『なんで私だけ?』と生きづらさを感じていたのか。

初めて人に幼少期のことを話して泣いた。私はずっと辛かったんだ。初めて気づいた。ずっと悲しい感情を誰にも言えず押し殺していたんだな。

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